あさがおの間
本展の冒頭では、ティファニーのガラスの器や銀製のカトラリー、版画や貴重文献に
写しとられた様々なあさがおの姿をお楽しみいただきます。日本では、
19世紀を通して、あさがおの栽培が大流行しました。1897年、米国のある旅行作家は、
「菊よりもずっと日本独特の花」としてこの花を紹介しています。
一時期は、欧米で日本美術と同義語になるほど人気を博したあさがおの花々。
その表現の多様さは、そのままジャポニスムという現象の多面性につながっています。

03.ジュール=ルネ・ラリック《朝顔文深皿》1920年代、ガラス[フランス]
04.05.ティファニー・スタジオ/ルイス・コンフォート・ティファニー《朝顔形コンポート》1889年、ガラス[アメリカ]
06.『浮世絵・絵本展図録』1890年[フランス・パリ]
07.08.09.ティファニー・スタジオ/ルイス・コンフォート・ティファニー《朝顔形鉢》1880年代 、ガラス[アメリカ]
10.ティファニー・スタジオ/ルイス・コンフォート・ティファニー《朝顔形コンポート》1880年代 、ガラス[アメリカ]
11.アンリ・ラシュー《装飾パネル》1893年、リトグラフ[フランス]
~欧米の世紀末を彩った日本~
ジャポニスムの到来
19世紀後半の欧米では、各地で催される万国博覧会や種々の展示会を通じて、
日本の陶磁器や漆器、家具や調度品に対する関心が急速に高まりました。
人々は、日本から輸出された品々を競って購入し、手元において愛好したばかりでなく、
このまだ見ぬ国を発想の源として、独自の芸術様式を開花させたのです。
欧米の生活空間を彩ったジャポニスムの一端を陶磁器や銀器のうちに探ります。

13.14.ジークフリート・ビング編『芸術の日本』1881-91年[フランス・パリ]
15.16.アドルフ・マルシアル=ポテモン『1878年パリ万国博覧会のある日本人に関する覚書とデッサン』1878年、
エッチング[フランス・パリ]
17.マッピン&ウェブ社《日本趣味ナイフセット》1880年代、銀・鍍金・銅[イギリス]
18.ゴーハム社《日本趣味ナイフセット》1880年代、銀・銅・金[アメリカ]
19.フランソワ=ウジェーヌ・ルソー《日本婦人図花瓶》1875-80年頃、ガラス[フランス]
~欧米の世紀末を彩った日本~
ジャポニスムの茶会
産業革命以後、ロンドンやパリ、ニューヨークなどの大都市には人口が集中し、商品の流れが活性化して、
大量消費社会が誕生しました。そして、かつては上流階級のものであった生活習慣が、
多くの人々の暮らしのなかに定着しはじめます。19世紀後半に広く普及したアフタヌーン・ティーも
そのひとつです。この時代、父権主義的な社会で「家庭の天使」としての役割を求められた中産階級の
女性たちは、茶会という私的なもてなしの場で、その社交の手腕を豊かに発揮しました。本展覧会では、
そうした宴のテーブルセッティングを再現します。28客の華やかなティーカップのコレクションや
テーブルウェアをご堪能ください。

21.エミール・ガレ《草花文皿》1875年、ガラス
22.エミール・ガレ《有職文鉢》1880年代、ガラス[フランス]
23.国立セーヴル磁器製作所《竹に透かし彫ティーセット》1862-76年、磁器[フランス]
24.バカラ社《燕花樹文足付花瓶》1870-80年、ガラス・ブロンズ[フランス]
25.~33.【28客のティーカップコレクションの一部】
~もてなしの品々が誕生するまで~
イギリス陶磁器界の創意工夫
もてなしの席には、香り高い紅茶やお手製の焼菓子、女主人の気の利いた会話にくわえて、
優美で使い勝手の良い陶磁器や銀器の存在が欠かせません。19世紀末に開かれた茶会においても、
そうした品々の制作方法やモチーフに関する話題が楽しまれたことでしょう。ミントン社や
ロイヤル・ウースター社においてどのようにしてジャポニスムの陶磁器が量産され、
より多くの人々の暮らしに浸透していったかを展覧します。

36.ミントン社《日本文物文皿》1882年、磁器[イギリス]
37.ロイヤル・ウースター社《吉祥文双扁壺》1877年、磁器[イギリス]
38.ロイヤル・ウースター社《吉祥文花生》1878年、磁器[イギリス]
39.ロイヤル・ウースター社《吉祥文カップ&ソーサー》1880年代、磁器[イギリス]
40.ロイヤル・ウースター社《吉祥文カップ&ソーサー》1878年、磁器[イギリス]
41.ロイヤル・ウースター社《吉祥文木桶形ピッチャー&シュガーポット》1880年、磁器[イギリス]
42.ロイヤル・ウースター社《祥瑞風羊歯文双耳扁壺》1877年、磁器[イギリス]
43.ロイヤル・ウースター社《唐草文双耳扁壺》1886年、磁器[イギリス]
44.ロイヤル・ウースター社《祥瑞風吉祥文双耳扁壺》1890年頃、磁器[イギリス]
~もてなしの品々が誕生するまで~
アメリカ銀器が写した日本の自然
ティファニー商会やゴーハム社では、あたかも日本の職人が手がけたかのような、
日本情趣豊かな秀作を数多く世に送り出しました。そうした秀逸な品々が、エドワード・C・ムーアを
はじめとする生粋の欧米人によって生み出されたという事実は、今日もなお、
私たちを驚嘆させてやみません。ここでは、銀器と版画の対比から、日本で古くから親しまれてきた
自然の情景が、ジャポニスムのモチーフとなって、欧米の生活空間に溶け込んでいった様子を辿ります。

46.ティファニー商会《日本人物文呼び鈴》1885年銀・銅[アメリカ]
47.ティファニー商会《群魚文ピッチャー》1877年頃銀・銅・金[アメリカ]
48.ゴーハム社《芭蕉句入花瓶「古池やかわず飛こむ水の音」》1897年、銀[イギリス]
49.シャルル=ルイ・ウダール《蛙》1894年、アクアチント[フランス]
50.カミーユ・マルタン『レスタンプ・オリジナル』第2年次の表紙1894年、リトグラフ[フランス]
51.52.ティファニー商会《瓢箪文酒ポット》1880年、銀・銅・金[アメリカ]
私だけのジャポニスム
19世紀後半から20世紀初頭にかけての欧米の大都市では、人と富の集積にともなって
消費文化が成熟し、客層の多様化に応じて数多くのデパートが開店しました。
ロンドンのハロッズやリバティ、パリのプランタン、ニューヨークのサックス・フィフス・アヴェニュー
といった名店は、こうした流れのなかで発展しました。ジャポニスムの優雅な茶会を終えたゲストの人々は、
そうした華やぐ夕暮れの街に出て、何を思いながら帰途についたのでしょう。
当時のショーウィンドウに思いをはせるとき、自由な発想から生まれた伸びやかな逸品に、
私たちも出会えるかもしれません。

/ジョージ・W・シーブラー社《ペーパーナイフ「笹に鶴、蜻蛉」》1880年代、銀[アメリカ]
/ドミニク&ハフ社《桜に鷺文香水入れ》1880年代、銀[アメリカ]
54.ゴーハム社《シガーライター「傘をさす日本婦人」》1882年、銀・銅ほか[イギリス]
~デイヴィー・コレクションについて~

ジョン&ミヨコ・ウンノ=デイヴィー夫妻
ニューヨーク在住のジョン&ミヨコ・ウンノ=デイヴィー夫妻はアッパー・ウェストサイドに転居した
1980年代半ばにアンティーク美術の蒐集をはじめました。当初の目的は、同地で最も名高い
19世紀末の歴史的建造物である現在の住まいに相応しい調度品で生活空間を装うことにあったといいます。
クリスティーズやサザビーズなどの一流オークション・ハウスに通うなかで、夫妻はあるとき、
陶磁器や銀器、装飾品に日本を想起させるモチーフが多用されていることに気づきました。
これがジャポニスムとの出会いでした。2011年春、当館に収蔵されたこのデイヴィー・コレクションには、
日本を発想源とする品々が19世紀末の欧米の室内をどのように豊かに彩り、そこで暮らす人々の感性に
深い影響を与えたかを示す逸品が数多く含まれます。ミントン社やロイヤル・ウースター社の陶磁器や
ティファニー商会やゴーハム社による銀器の優品は、欧米の産業界が生活のなかのジャポニスムを
いかに形づくってきたかを雄弁に物語ります。









