三菱一号館美術館公式ブログ

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2020年9月11日

「画家が見たこども展」をファッションで見てみたら 1.こどものファッション

「画家が見たこども展」も、いよいよ9月22日で閉幕です。本展は最終週の夜間開館もなく、
皆さんには少々ご不便をおかけしておりますが、海外から借用した作品も揃ったまま無事終了をむかえられそうです。

Photo : Hayato Wakabayashi

 

展覧会が終わってしまう前に、ちょっと変わった視点から作品を眺めてみましょう。ナビ派は19世紀末に、20代そこそこの若い画学生たちが結成した画家のグループ。ポール・ゴーガンや神秘主義に影響を受けて成立したのは皆さんご存じのとおりです。彼らは同時代の、現実に存在する人々や家族を描きました。このために、ナビ派の作品は、100年以上経った時代に生きるわたしたちが見ても、とても親しみやすい作品となっているのです。

まずは三菱一号館美術館が所蔵する作品から。スイス人のナビ派の画家、フェリックス・ヴァロットンが1893年に描いた木版画の《女の子たち》には、大都市の街中を行く、10歳くらいの少女たちが描かれています。彼女たちが身につけている膝丈くらいのワンピース型のドレスの上に着ているのは「エプロンドレス」と呼ばれる、エプロン型の上っ張りのようなドレスです。

フェリックス・ヴァロットン《女の子たち》 1893年 木版・紙 三菱一号館美術館蔵

 

幼稚園などで子どもたちが着るスモックに似ていますが、背中部分があいていて、その上部を留めるようになっています。そのため、裾や背中部分にちらっとドレスが見える仕掛け。ヴァロットンの描いた少女たちは、おしゃれな柄の靴下に短いブーツまで履いて、まさに都会の少女たちといった様子です。白と黒の画面ですが、なぜか色彩を感じさせます。

1912年に刊行された、モーリス・ドニ『最初の風景』という本の挿絵には、エプロンドレスの後姿を見ることができます。この挿絵に描かれているのは姉妹です。海に沈んでいく太陽を並んで眺める彼女たちは、お揃いのドレス、お揃いのエプロンドレスをつけています。家族の愛情や彼女たちの仲のよさまで伝わってくる、優しい雰囲気の挿絵ですね。右端の男の子が着ているのはセーラー服。セーラー服は英国のヴィクトリア女王が王子に着せた水兵の制服が発端で、子ども服として大流行しました。「画家が見たこども展」の作品にも度々登場しますので注目してみてください。

モーリス・ドニ『最初の風景』 1912年刊行 書籍 個人蔵

 

ところで、エプロンドレスは、ドレスに汚れが付かないようにするという目的のほかに、学校へ通う時の制服のような役割も担っていました。ヴァロットンの作品に描かれた少女たちは鞄をもっていませんから、恐らくは校外学習にでたところでしょうか。

本展で最も人気のあった作品のひとつは、モーリス・ドニの小さな油彩画です。赤いチェックのエプロンドレスを着けた、青い目のかわいらしい女の子が公園を楽しそうに歩いています。この小さな少女が身に着けているのもエプロンドレス。彼女の歩みとともにエプロンドレスが風になびいて、下に着たドレスがちらっと見えています。背景のピンク色の花と、彼女のエプロンドレスの優しい赤が見事な調和を見せています。

モーリス・ドニ《赤いエプロンドレスを着た子ども》 1892年 油彩・厚紙 個人蔵

 

ナビ派の画家たちは、さりげない、身近な風景を描きました。平面性や限られた色彩などの制作上の特徴だけでなく、描かれた人物が身につけているファッションに注目すると、作品を別の視点から楽しむことができます。展覧会は9月22日まで。ぜひ会場で、ナビ派の画家たちが描いたファッションを楽しんでください。

◆画家が見たこども展展覧会サイト:https://mimt.jp/kodomo/

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