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三菱一号館美術館 公式ブログ 当館のイベントの様子や出来事をお知らせしていきます。

2021年9月3日

もっと知りたい、展覧会の作り方/「奇跡のクラーク・コレクション」展編

前回のブログでは、「上野リチ展」が、担当者がまだ世に知られていない作家を紹介すべく準備している、手作り感の強い展覧会、とお伝えしました。今回は、「上野リチ展」とは異なる展覧会開催の経緯をご紹介しましょう。

2013年に三菱一号館美術館で開催された「奇跡のクラーク・コレクション―ルノワールとフランス絵画の傑作」展を覚えていらっしゃいますか?
アメリカの北東部、ニューヨークとボストンの間の内陸にある、マサチューセッツ州のウィリアムズタウンという学究都市にある美術館が所蔵する、印象派を中心としたコレクション73点で構成された展覧会でした。

◆クラーク美術館のWEBサイト◆

この展覧会では、ルノワールやモネなど、見ているだけで幸せになってくる優しさと潤いに満ちた作品が人々をひきつけ、当館の企画の中でも入館者数上位を誇る展覧会でした。ルノワール作品は実に22点、その半数が初来日ということもあって、プレスからも大いに注目されました。

展覧会開催には新聞社やテレビ局が関わることがあることをご存じの方もいらっしゃると思いますが(関わり方も様々です)、「奇跡のクラーク・コレクション」展は、クラーク美術館が構成して世界巡回をしていた展覧会を、新聞社が誘致したものでした。新聞社の文化事業の担当者から当館に提案があり、館内で内容や費用などを検討した結果、開催することが決まったのです。日本では当館と兵庫県立美術館の二館での開催でした。

クラーク美術館が展覧会を構成した世界巡回展ですから、新聞社から当館に提案があった時には展示作品は決定していました(日本に作品がやって来る前、状態が悪いことが判明した作品が、別の作品に差し替えされたということはありました)。作品は決まっていましたが、世界巡回してきた作品をどのように構成するかが当館に任されました。この展覧会は、イタリア、フランス、スペインなどでも開催され、それぞれの美術館が独自に構成を行ったため、作品の展示順や展覧会の雰囲気は各館で全く異なっています。

また、図録は各国独自に作っており、日本でも作成しました。図録に掲載するテキストはクラーク美術館から提供を受けた英語のテキストを日本語に翻訳、そのほか、日本独自に関連地図や作家解説などの資料編を作成して掲載しました。
多くの方に手にとっていただきたい、ということで、軽量の図録作成を試みました。また、さわやかな感じにしたいということで、ブルーベースの透明感ある表紙に仕上がりました。ただ、日本側でなんでも勝手に構成してよい、ということではなく、内容は全てクラーク美術館の担当者に連絡し、許可を取る、という作業を繰り返したのです。

さて、新聞社が仲介してくれて開催が可能となった「奇跡のクラーク・コレクション」展ですが、新聞社は何をしたのでしょうか。実はこの展覧会では大変重要な任務を担ってくれました。

たとえば、作品の輸出や輸入、国内での作品輸送などのロジスティクスの調整、図録の内容をクラーク美術館への連絡、掲載された画像の権利処理、ポスターやチラシのデザインや内容をクラーク美術館への連絡と許可取り付けなどです。
そのほかにも、作品展示及び撤去時に立ち会うクーリエ来日のための計画と実行も担っていました。美術館が図録の内容や展覧会場のデザインなどに注力している間、美術館外からも多くの支援が行われますが、この展覧会では新聞社による大きな助力がありました。

冒頭でお伝えした通り、展覧会にはさまざまな作り方があります。2013年に行われた「奇跡のクラーク・コレクション」展は、新聞社の文化催事の部署と四つに組んで進める、ダイナミックなものでした。

展覧会にお出かけの際には、この展覧会はどんな作り方なのかな?とちょっと想像してみるのも面白いかもしれません。

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もっと知りたい、展覧会の作り方/「奇跡のクラーク・コレクション」展編

前回のブログでは、「上野リチ展」が、担当者がまだ世に知られていない作家を紹介すべく準備している、手作り感の強い展覧会、とお伝えしました。今回は、「上野リチ展」とは異なる展覧会開催の経緯をご紹介しましょう。

2013年に三菱一号館美術館で開催された「奇跡のクラーク・コレクション―ルノワールとフランス絵画の傑作」展を覚えていらっしゃいますか?
アメリカの北東部、ニューヨークとボストンの間の内陸にある、マサチューセッツ州のウィリアムズタウンという学究都市にある美術館が所蔵する、印象派を中心としたコレクション73点で構成された展覧会でした。

◆クラーク美術館のWEBサイト◆

この展覧会では、ルノワールやモネなど、見ているだけで幸せになってくる優しさと潤いに満ちた作品が人々をひきつけ、当館の企画の中でも入館者数上位を誇る展覧会でした。ルノワール作品は実に22点、その半数が初来日ということもあって、プレスからも大いに注目されました。

展覧会開催には新聞社やテレビ局が関わることがあることをご存じの方もいらっしゃると思いますが(関わり方も様々です)、「奇跡のクラーク・コレクション」展は、クラーク美術館が構成して世界巡回をしていた展覧会を、新聞社が誘致したものでした。新聞社の文化事業の担当者から当館に提案があり、館内で内容や費用などを検討した結果、開催することが決まったのです。日本では当館と兵庫県立美術館の二館での開催でした。

クラーク美術館が展覧会を構成した世界巡回展ですから、新聞社から当館に提案があった時には展示作品は決定していました(日本に作品がやって来る前、状態が悪いことが判明した作品が、別の作品に差し替えされたということはありました)。作品は決まっていましたが、世界巡回してきた作品をどのように構成するかが当館に任されました。この展覧会は、イタリア、フランス、スペインなどでも開催され、それぞれの美術館が独自に構成を行ったため、作品の展示順や展覧会の雰囲気は各館で全く異なっています。

また、図録は各国独自に作っており、日本でも作成しました。図録に掲載するテキストはクラーク美術館から提供を受けた英語のテキストを日本語に翻訳、そのほか、日本独自に関連地図や作家解説などの資料編を作成して掲載しました。
多くの方に手にとっていただきたい、ということで、軽量の図録作成を試みました。また、さわやかな感じにしたいということで、ブルーベースの透明感ある表紙に仕上がりました。ただ、日本側でなんでも勝手に構成してよい、ということではなく、内容は全てクラーク美術館の担当者に連絡し、許可を取る、という作業を繰り返したのです。

さて、新聞社が仲介してくれて開催が可能となった「奇跡のクラーク・コレクション」展ですが、新聞社は何をしたのでしょうか。実はこの展覧会では大変重要な任務を担ってくれました。

たとえば、作品の輸出や輸入、国内での作品輸送などのロジスティクスの調整、図録の内容をクラーク美術館への連絡、掲載された画像の権利処理、ポスターやチラシのデザインや内容をクラーク美術館への連絡と許可取り付けなどです。
そのほかにも、作品展示及び撤去時に立ち会うクーリエ来日のための計画と実行も担っていました。美術館が図録の内容や展覧会場のデザインなどに注力している間、美術館外からも多くの支援が行われますが、この展覧会では新聞社による大きな助力がありました。

冒頭でお伝えした通り、展覧会にはさまざまな作り方があります。2013年に行われた「奇跡のクラーク・コレクション」展は、新聞社の文化催事の部署と四つに組んで進める、ダイナミックなものでした。

展覧会にお出かけの際には、この展覧会はどんな作り方なのかな?とちょっと想像してみるのも面白いかもしれません。

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