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もっと知りたい、展覧会を企画する/上野リチ展の種が蒔かれるまで

これまで本ブログでは2回、展覧会の裏側についてご紹介してきました。

◆美術館では常識?!「クーリエ」とは(もっと知りたい、番外編!)

◆もっと知りたい、(さらに番外編) 「何が行われているの?休館中の美術館」

今回は2022年2月に開催する、日本では殆ど知られていないウィーン工房のデザイナー、上野リチの展覧会を、なぜ当館で開催することになったのかをご紹介します。

世界で初めての上野リチの回顧展。開幕まで一年を切り、特設サイトも公開されるところまできました。美術館では総力を挙げて準備をしています。

いまから10年以上前の2009年、リチと夫の上野伊三郎の二人展が、京都国立近代美術館と目黒区美術館で開催されました。この時、200ページを超す充実した図録が作成され、また、リチのデザインを用いた一筆箋やファイルなど、数々のミュージアムグッズも作られました。

当館の本展担当者は、2012年頃に同館を訪問した際、その色彩と曲線の美しさのために、思わず一筆箋に引き寄せられてしまいます。そして、その近くにあった2009年の展覧会図録の表紙のデザインのすばらしさに嘆息して手を伸ばし、頁をめくってリチの作品の麗しさに魂を抜かれ、図録とグッズを「大人買い」して東京に戻ってきたのでした。

いつかこの作家の展覧会をしたい、三菱一号館美術館のファンには似合うはず、と数年にわたり思いを巡らせていたところ、幸運なことに、世界初の回顧展を京都国立近代美術館と当館とで開催できることとなりました。リチの作品は、ウィーンのオーストリア応用芸術博物館/現代美術館、ニューヨークのクーパーヒューイット スミソニアン・デザイン・ミュージアム、京都国立近代美術館の三館がそれぞれ数百点ずつ、デザイン画を中心とした作品を所蔵しています。この三館の作品が集結すれば、世界初且つリチの最大のコレクションを所蔵する全三館からの作品が揃うという、夢のような展覧会となります。

一言で展覧会といっても、実現するまでには様々なパターンがあります。

「上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー」は、学芸員の頭の中にだけある妄想展覧会を具現化するため、手探りで実現の道を探った、手作り感の強い展覧会です。そうしたことに加え、重要なのが、各館の展覧会や、作品を所蔵する館の作品貸出のスケジュール、また、専門分野、研究対象、専門とする時代が近く、展覧会を担当できる学芸員がいるかどうか、などなど、様々な条件がそろう必要があります。

今回の展覧会ではウィーンとニューヨークから作品を借用しますので、作品の状態確認依頼、作品修復の可否、輸送箱作成など作品輸出のための費用、クーリエ(作品輸送に随行する所蔵館の職員)来日の条件などの交渉もあります。会期をいつにするか、京都と東京の条件を合わせることがなかなか難しく、決定までにはかなりの時間を要しました。

現在、本展覧会の無事の開催を目指し、展覧会担当者は、当館のマネジメントや施設管理担当者、広報担当と展覧会にかかわる各所の「『上野リチ展』チーム」と日々情報交換をしながら準備を続けています。作品総数約370点、デザイン画、テキスタイル、七宝の小箱や飾り板、伊三郎との合作の巻子などなど、リチのめくるめくデザイン世界が一望できる展覧会となる見込みです。

 

チラシも完成し、館内で配布が始まりました。
ご来館の際にはぜひお手に取ってご覧ください!

 

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