三菱一号館美術館 館長 池田祐子よりごあいさつ
三菱一号館美術館は、このたび2024年4月1日付で新館長には池田祐子が就任いたしました。
なお、このたび再開館記念展のタイトルも「三菱一号館美術館 再開館記念『不在』―ソフィ・カルとトゥールーズ=ロートレック」に決まりましたので発表いたします。
【三菱一号館美術館 館長 池田祐子よりごあいさつ】
2024年4月より、三菱一号館美術館の三代目館長を務めることになりました。
三菱一号館美術館は、「都市生活の中心としての美術館」をミッションに掲げ、日本を代表するビジネス街である丸の内の文化施設として、2010年に三菱地所株式会社によって設立され、10年余りの歴史を刻んできました。この間に開催された40余りの展覧会を通じ、さらには美しい赤煉瓦建物と薔薇が咲き誇る庭園の魅力も相まって、三菱一号館美術館は、文字通り丸の内のランドマークとして多くの人々に愛される存在へと発展してきました。
館長としての私の任務は、この素晴らしい美術館の継続性を確かなものにし、そして美術館の未だ隠れた潜在力を見いだすことで、より幅広い人たちが「新しい私に出会う」プラットフォームとして、一層その存在感を高めていくことにあると考えています。
都市とは重層的でハイブリッドな空間です。都市の美術館として、三菱一号館美術館では、一号館創建時の建物に由来する19世紀末から20世紀前半にかけての西洋近代美術を基軸としつつも、日本との関係性を常に念頭におきながら、広範な芸術ジャンルを横断的に紹介していきます。その活動を充実させるため、今秋の再開館を機に、従来の展覧会場のほかに新たな二つのスペースを設置します。そのひとつ「小展示室」では、開館以来の収蔵作品と寄託作品を、各学芸員が独自の切り口で展示・紹介します。また多目的室「Espace(エスパス) 1894」を開設し、レクチャーなど関連事業の更なる展開を目指します。美術館活動のレイヤーを増やすことで、人々の美術館へのアクセス方法を多様化し、それが美術館ひいては周辺地域の活性化に繋がることを期待しています。
三菱一号館美術館は、一年半余りのメンテナンス休館を経て、この11月23日にソフィ・カルとトゥールーズ=ロートレックの展覧会で再開館します。本展は、三菱一号館美術館で初めて現存作家を採りあげる試みでもありますが、そのテーマ「不在」には、新型コロナウィルスの感染拡大や長期休館を経て、丸の内という都市空間に立地し活動する美術館という「存在」をあらためて来館者とともに考えていきたい、という意図が込められています。
「新しい私と出会う」ことを通じて、都市さらには世界のより良き発展に寄与できるような美術館活動を志し、微力ながらも努力して参ります。
秋の再開館時にみなさまにお目にかかれることを心待ちにしつつ、今後とも三菱一号館美術館の活動にご支援賜りますよう心よりお願い申し上げます。
池田祐子
新たに館長に就任する池田祐子は、大阪大学大学院文学研究科博士課程後期終了後、京都国立近代美術館・国立西洋美術館主任研究員を経て、2019年4月から京都国立近代美術館学芸課長、2022年7月からは副館長を、2024年3月まで務めました。専門はドイツ(語圏)近代美術・デザイン史で、2022年に当館で開催した「上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー」展を監修しました。近年の主な展覧会企画に、「上野リチ:ウィーンからきたデザイン・ファンタジー」展(2021-22年)、「京都国立近代美術館所蔵 世紀末ウィーンのグラフィック―デザインそして生活の刷新にむけて」(2019年)、「KATAGAMI Style」(2012年)、「パウル・クレー―おわらないアトリエ」(2011年)、最近の論文に、「分離派の誕生――ミュンヘン、ベルリンそしてウィーン」(田路貴浩(編)『分離派建築会―日本のモダニズム建築誕生』京都大学学術出版会、2020年)、「総合芸術に宿る夢―芸術作品としてのウィーン、そしてオーストリア」および「ウィーン工房―「ウィーン」ブランドの創出とその展開」(池田祐子編『西洋近代の都市と芸術4ウィーン―総合芸術に宿る夢』竹林舎、2016年)などがあります。
現在当館は、設備入替および建物メンテナンスによる長期休館しておりますが、2024年11月23日から2025年1月26日まで「三菱一号館美術館 再開館記念『不在』―ソフィ・カルとトゥールーズ=ロートレック」展を開催する予定です。
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