美術館では常識?!「クーリエ」とは(もっと知りたい、番外編!)
展覧会を開催するにはたくさんのプロセスがあります。
今回は作品借用には欠かせない「クーリエ」のお仕事に注目!当館学芸員が、「クーリエ」の疑問にお答えします。
展覧会に展示する作品を借りる際に、その作品に付き添って、貸出先の美術館に持ってきてくれる人のことを「クーリエ」と呼びます。
Q.「クーリエ」という専門職があるのですか?どうやって仕事を依頼するのですか?
A.クーリエ業務は、通常、作品を貸出す館の人間が行います。つまり、美術館に所属する修復家(コンサバター)、学芸員(キュレーター)、作品管理者(レジストラー)などが担当します。簡単に言えば、その作品のことをよくわかっている人が対応すると考えていただくとわかりやすいかもしれません。当館では学芸員がクーリエの任務を行います。他館では、館外の修復家などに依頼することもありますが、当館ではこれまで外部に依頼したことはありません。
ちなみに、外国からは「レジストラー」という作品の管理を専門としている職業の方がクーリエとしてやってくることが多いです。フランスのオルセー美術館などの大規模な館にはレジストラーが複数いて、順番で対応しています。そのため、展示と撤去のときには別の人が来日することが多いです。レジストラーは作品の状態を一番知っている人で、その館の規定により貸出を不許可にしたり、作品の状態が悪い時には修復をするようにと指示を出したりします。日本ではレジストラーという専門業種の人がほぼいないので、学芸員(クーリエとして作品についていく)がほとんどですね。
Q.「大きな展覧会だと10人以上のクーリエが世界中からやって来ることもあります。」とありましたが、1作品に複数人が帯同してくることもあるのでしょうか?
A.一作品に複数ということはまずありません。複数の作品に一人ということが普通です。経験はありませんが、大型の作品など非常に複雑な構造の作品にはそういうこともあるかもしれません。ただ、同じ館から大量に借りる場合は(〇〇美術館展など)同じ館から何人も来る場合があります。これは作品の点検や展示作業が一人のクーリエでは間に合わないからです。
Q.クーリエを務める人は、展覧会の会期中は一旦所属先に戻り、返却時に再度貸出先に行くのでしょうか?
A.はい、我々も展示が済んだら日本に戻り、数か月後の撤去の時にまた出かけて作業をおこないます。
Q.作品は基本的には飛行機で運びますか?大きなもので飛行機に乗らず、船便になり、クーリエも船の長旅なるということもあるのでしょうか?
A.大理石の彫刻など、重量のある作品であっても、通常は飛行機で運びます。飛行機の積み込みの直前までクレート(輸送箱)に入った作品を見守り、飛行機が到着したあとにはクレートが出てくるところまでを可能な限り作品に寄り添って確認するのがクーリエの務めです。ごくごく小さな作品の場合は飛行機の座席に持ち込むこともあります。現地の空港に到着後は美術品専門の大型のトラックに乗って(荷台ではなく座席に座ります!)、展示される館まで作品と同行し、24時間から48時間という時間をかけて、その土地の温湿度にならしてから開梱し、展示します。このように、クーリエ業務はなかなか体力のいる仕事なのです。
一つの展覧会が開かれるまでには、たくさんのプロフェッショナルな方が関わっています!なかなか表には出てこない「お仕事」もたくさんあります。また機会があればご紹介いたしますので、お楽しみに。
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