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そもそも、「ルツとボアズ」とは? つづき

皆様こんにちは。本日は先の記事の「ルツとボアズ」とは?の続きをご紹介して参ります。
ちょうど本日はクリスマスでもありますので、季節がらぴったりな話題です。

さて前回「ルツとボアズ」は、『旧約聖書』の登場人物の名前であるという事をご紹介いたしました。
ルツとは、モアブ(地名)人の女性です。ユダの女ナオミの息子マフロンと結婚しますが、
夫に先立たれてしまいます。姑のナオミも夫も亡くし、自分の故郷であるユダに帰ることにします。
その際、ナオミは嫁のルツには「自分の故郷へかえりなさい」と申し入れます。しかしながら、
既に夫がいないにもかかわらず、ルツは、自分の故郷、親族、宗教を捨てて見知らぬ土地へと、
姑であるナオミについていくことを選択した、家族思いの女性です。

一方のボアズは、ベツレヘムの大地主でした。
落穂拾いをしているルツを見初め、のちに二人は結婚することとなります。
ちなみに、ナオミとボアズは親戚関係でもありました。旧約聖書の時代には「買い戻しの権利」※1
という決まりが存在しており、血のつながり※2が大変重要視されておりました。
ミレーの《刈入れ人たちの休息(ルツとボアズ)》は、ボアズがルツを使用人たちに紹介している場面なのです。
ちなみにルツは、大変美しいとされており、アレクサンドル・カバネル((1823ー1889)フランスの画家、
古典、宗教を主題とした作品が多い。)なども肉感的で美しいルツを描いています。

そして、ボアズはイスラエルの王となるダビデの祖先、ダビデはイエスの父ヨセフの祖先であるので、
ルツとボアズはイエスの直系の家系※3なのです!

 このように下敷きとされている物語を知ることで、描かれている情景がより生き生きと映るのではないでしょうか。

SC164482 ルツとボアズ 
ジャン=フランソワ・ミレー《刈入れ人たちの休息(ルツとボアズ)》1850-53年、油彩・カンヴァス
Bequest of Mrs. Martin Brimmer 06.2421
Photograph ©2014 Museum of Fine Arts, Boston

 
最後に絵の構成の視点から、作品の見どころをご紹介いたします。

1、 農夫たちの視線は自然にルツとボアズに向かうように描かれています。
2、 二人の衣服の色は、他の人物よりも濃い色合いを用いており、自然と二人に注目するように構成されています。
3、 ルツに犬が寄り添っています。犬は西洋では忠実を意味し、ルツの献身さを表す役割を果たしています。

※1
◆買い戻しの権利
「もし同胞の一人が貧しくなったため、自分の所有地の一部を売ったならば、
 それを買い戻す義務を負う親戚が来て、売った土地を買い戻さねばならない。」(レビ記25章25節)

※2
「兄弟が共に暮らしていて、そのうちの一人が子供を残さずに死んだならば、
 死んだ者の妻は家族以外の他の者に嫁いではならない。亡夫の兄弟が彼女のところに入り、
 めとって妻として、兄弟の義務を果たし、 彼女の産んだ長子に死んだ兄弟の名を継がせ、
 その名がイスラエルの中から絶えないようにしなければならない。」(申命記25章5〜6節)

※3
「ボアズにはオベドが生まれた。オベドにはエッサイが生まれ、エッサイにはダビデが生まれた。」
(ルツ記4章21~22節)
ダビデは羊飼いをしていたが、ユダの王となる。
また『新約聖書』にはイエスがダビデの子孫であると述べられている。 

これで皆様も《刈入れ人たちの休息(ルツとボアズ)》通です!

 

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