松元悠さんの個展「活蟹に蓋」作品制作について
皆さま、こんにちは。本日は松元悠さんの個展「活蟹に蓋」に展示されている作品制作についてご紹介いたします。
新聞やニュースで知った事件を、松元さんの解釈で作品を描いています。きっかけは様々で、身の回りで偶然耳にした情報、噂、たまたま目にした記事などから情報収集し、立ち位置を定め、正確であるかよりも自分の納得する解釈まで導き、作品を作り上げます。
絵画でなく、リトグラフという版画技法を使っていることについては、「リトグラフの〈平版〉という、画面がフラットで重力を感じさせない点が、様々な現実の場所や時間軸から引用し、コラージュのように配置しているモチーフを均一にさせる効果を果たしている(安井海洋「血石と蜘蛛」評増補版 出典)」のと、「生々しい題材のため、直接手で描いていくより、刷りとる工程を重ねていく方が現実の題材と程よい距離が取れる」という理由だそうです。
また、歴史資料室での展示のために描かれた作品について、松元さんからコメントをいただきましたのでそちらもご紹介します。
「ビルヂング(丸の内)」
三菱一号館美術館の歴史資料室にて目にした「安全第一ビルヂング読本」の内容を読んで驚いた。『掲示だけでよくわからぬことは受付か案内係に聞くこと。受付か、案内係以外の人に聞くと、聞かれた人も迷惑し、答にも、間違いがあるからです。』など、今でいう当たり前のことを、丁寧に理由をつけて解説してある。社会が大きく変動する時代には、あらゆる立場の人々にこのような〈気遣い〉が存在していたことに衝撃を受けた。
一方で、2002年以降、10棟の「ビルヂング」が「ビルディング」へと生まれ変わったという記事を見かけた。記事が書かれた2011年には、丸の内周辺で残っている「ビルヂング」は15棟。所有者の変更に伴う改名なども含めると、この20年間でほぼ半減したことになる。15棟はいずれも再開発の計画は未定だが、築年数が長い物件が多く、いずれは建て替えとなる公算が大きいという。ビルヂングという名前を変更する理由に、「旧丸ビルの建て替えを皮切りに丸の内再開発の第一ステージが始まりました。これを大きな区切りととらえたのです」(広報部)と、三菱地所は答える。 再び社会が変動するタイミングに、「安全第一ビルヂング読本」に書かれるような、気遣いがある優しい世界が見え隠れしてほしい。そのような願いを込めて、今回の制作に至った。
松元悠の個展「活蟹に蓋」
■会 期:2019年3月19日~4月14日(日)
■開館時間:10~18時 入館は閉館の30分前まで
■休 館 日:月曜日
※歴史資料室の通常展示が一部ご覧いただけませんので、ご了承ください。
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