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2018年10月1日

埋もれた巨匠を発掘!①:ロジェ・ド・ラ・フレネ

皆さま、こんにちは。
今回は予告通り、名誉ある?「埋もれた巨匠」に認定された画家、「ロジェ・ド・ラ・フレネ」(1885-1925)をご紹介いたします。

ロジェ・ド・ラ・フレネ《エンブレム(地球全図)》1913年 画像ロジェ・ド・ラ・フレネ《エンブレム(地球全図)》1913年 油彩/カンヴァス Acquired 1939 フィリップス・コレクション蔵

――早速ですが、ロジェ・ド・ラ・フレネとはどのような画家だったのでしょうか?

彼はキュビスムの画家です。当時はキュビスムの前衛的な画家として名前が知られていました。キュビスムと言えばピカソやブラックが有名ですね。特に現代においては、この二人は高く評価されていて、別格と言っていいと思います。
ロジェ・ド・ラ・フレネの評価は、残念ながらこの二人に及ぶほどではないのが現状です。

――キュビスムとは、アフリカのマスクや古代イベリアの彫刻などの影響を受けてピカソが描いた《アビニヨンの娘たち》に始まる運動ですよね。そのなかでフレネはどのような存在だったのでしょうか?

キュビスムは、特に最盛期の作品は遠近法や明暗法に頼らず、対象の形をいったん分解して複数の視点から再構成する方法をとりました。そのため、モチーフを分解しすぎてしまって、何を描いているかわからからない絵も多いのではないでしょうか?

いろいろな視点を入れるということを重要視したため、どんどんもとの形から分解されて、原型をとどめていないことも多いです。また、形態の分析や再構築に関心が向いてしまいがちで、色彩、或いは色の華やかさと言うのはちょっと脇に置かれていました。

そんな中で、フレネはキュビスムに、明るい色彩を持ち込んだ画家といえると思います。また、「分解が進み過ぎていない」というところもフィリップスが評価した点です。

フレネの作品をご覧頂くと、モチーフは「分解が進み過ぎていない」ので、原型をとどめており、何が描かれているのかがわかります。我々としては、ピカソやブラックの先鋭的なキュビスムよりも理解しやすい、あるいは近づきやすいといったら良いでしょうか。そんな特徴があります。

――ダンカン・フィリップスがコレクションに、ロジェ・ド・ラ・フレネを選んだのはどのような理由があるのでしょうか?

本展の主役、ダンカン・フィリップスは、彼のコレクションを形成するにあたって、常に意識していたことがあります。それはバランスです。
先ほどから申し上げている、「分解が進み過ぎていない」というのは、フィリップスがフレネの作品で評価していたポイントです。

また、明るい色彩を用いたという点もフィリップスは評価していました。他の作品と並べたときに違和感がないこと、調和がとれているということでフィリップス・コレクションに迎え入れられたのではないでしょうか。

――ロジェ・ド・ラ・フレネの名前を知らなかったのですが、生前はキュビスムの画家として有名だったのですか?

現在では、フレネはマイナー感のある画家となってしまっていますけれども、当時はもちろん世に知られた画家でした。アメリカでも展覧会に出品される機会は少なくありませんでした。フィリップスも必然的に、彼の作品を目にする機会も多かったと考えられます。フィリップスは基本的に自分で見た作品の中から、コレクションを購入していますので。

――今回展示される作品について、教えてください。

ロジェ・ド・ラ・フレネ《エンブレム(地球全図)》1913年 油彩/カンヴァス Acquired 1939

今回展示される《エンブレム(地球全図)》という作品は、1913年のサロン・ドートンヌ(秋の展覧会)に出品されました。この作品と対になっている作品と共に出品され、画家としても力のこもった作品です。

ちなみに、片方の作品はフィリップス・コレクションと同じ街ワシントンのナショナル・ギャラリーに収蔵されています(当館でも過去に展覧会を実施した美術館です)。この作品の中には地球儀が描かれていますが、「分解が進んでいない」ので、地球儀であることがぱっと見て解りますね!

――ところで、ダンカン・フィリップスさんはキュビスムが好きだったのですか?

いいえ。ピカソとブラックがともにピークを迎えていた時期の作品は、あまり集めていません。ピカソやブラックは先鋭的過ぎて、つまりあまりにも「分解が進んで」いたためにコレクションの中で、調和がとれていない、バランスが取れないと考えていました。フィリップスの表現を借りれば、「抽象化が進みすぎている」ということになるのですけれども。
そんな中、フレネの作品は「分解が進み過ぎていない」という点でバランスがとれている評価されたのだと思います。

――そのほかにフレネの特徴はありますか?

彼の出身地は、ルマン24時間耐久レースが行われることで有名なルマンの生まれで、比較的早く10代の終わりでパリに出て、アカデミーランソンや、アカデミージュリアンにも通っていました。当館ファンならば、このワードにピンとくる人もいるのではないでしょうか?

ところで、以前当館で展覧会を開催した画家、梅原龍三郎がアカデミージュリアンに通っていた時期とフレネが通っていた時期が重なっているのです。もしかすると、二人は会ったことがあるかもしれません!気になって調べているのですが、残念ながらまだそれを裏付ける資料は見つかっていません。今後見つかったら、面白いですよね。
梅原先生がルノワールやセザンヌ、ピカソに学んだ時代と重なっているということにも、ぜひ想いを馳せてみてください。

――フレネの作品が見たくなったらどうすればいいですか?

それはもちろん、当館で10月19日から始まる「フィリップス・コレクション展」にご来館ください(笑)

そのほかには、大規模な回顧展のようなものは難しいと思いますが……、「キュビスム展」のようなテーマの場合は、ピカソやブラックといった大スターの作品と共に、展示されていることも多いと思います。

見落とさないように、「分解が進み過ぎていない」「鮮やかな色彩」というキーワードに注目してよく探してみてください!

――どうも有難うございました。次回は、ドイツ出身の「埋もれた巨匠」をご紹介します。

どうぞ、お楽しみに!!

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埋もれた巨匠を発掘!①:ロジェ・ド・ラ・フレネ

皆さま、こんにちは。
今回は予告通り、名誉ある?「埋もれた巨匠」に認定された画家、「ロジェ・ド・ラ・フレネ」(1885-1925)をご紹介いたします。

ロジェ・ド・ラ・フレネ《エンブレム(地球全図)》1913年 画像ロジェ・ド・ラ・フレネ《エンブレム(地球全図)》1913年 油彩/カンヴァス Acquired 1939 フィリップス・コレクション蔵

――早速ですが、ロジェ・ド・ラ・フレネとはどのような画家だったのでしょうか?

彼はキュビスムの画家です。当時はキュビスムの前衛的な画家として名前が知られていました。キュビスムと言えばピカソやブラックが有名ですね。特に現代においては、この二人は高く評価されていて、別格と言っていいと思います。
ロジェ・ド・ラ・フレネの評価は、残念ながらこの二人に及ぶほどではないのが現状です。

――キュビスムとは、アフリカのマスクや古代イベリアの彫刻などの影響を受けてピカソが描いた《アビニヨンの娘たち》に始まる運動ですよね。そのなかでフレネはどのような存在だったのでしょうか?

キュビスムは、特に最盛期の作品は遠近法や明暗法に頼らず、対象の形をいったん分解して複数の視点から再構成する方法をとりました。そのため、モチーフを分解しすぎてしまって、何を描いているかわからからない絵も多いのではないでしょうか?

いろいろな視点を入れるということを重要視したため、どんどんもとの形から分解されて、原型をとどめていないことも多いです。また、形態の分析や再構築に関心が向いてしまいがちで、色彩、或いは色の華やかさと言うのはちょっと脇に置かれていました。

そんな中で、フレネはキュビスムに、明るい色彩を持ち込んだ画家といえると思います。また、「分解が進み過ぎていない」というところもフィリップスが評価した点です。

フレネの作品をご覧頂くと、モチーフは「分解が進み過ぎていない」ので、原型をとどめており、何が描かれているのかがわかります。我々としては、ピカソやブラックの先鋭的なキュビスムよりも理解しやすい、あるいは近づきやすいといったら良いでしょうか。そんな特徴があります。

――ダンカン・フィリップスがコレクションに、ロジェ・ド・ラ・フレネを選んだのはどのような理由があるのでしょうか?

本展の主役、ダンカン・フィリップスは、彼のコレクションを形成するにあたって、常に意識していたことがあります。それはバランスです。
先ほどから申し上げている、「分解が進み過ぎていない」というのは、フィリップスがフレネの作品で評価していたポイントです。

また、明るい色彩を用いたという点もフィリップスは評価していました。他の作品と並べたときに違和感がないこと、調和がとれているということでフィリップス・コレクションに迎え入れられたのではないでしょうか。

――ロジェ・ド・ラ・フレネの名前を知らなかったのですが、生前はキュビスムの画家として有名だったのですか?

現在では、フレネはマイナー感のある画家となってしまっていますけれども、当時はもちろん世に知られた画家でした。アメリカでも展覧会に出品される機会は少なくありませんでした。フィリップスも必然的に、彼の作品を目にする機会も多かったと考えられます。フィリップスは基本的に自分で見た作品の中から、コレクションを購入していますので。

――今回展示される作品について、教えてください。

ロジェ・ド・ラ・フレネ《エンブレム(地球全図)》1913年 油彩/カンヴァス Acquired 1939

今回展示される《エンブレム(地球全図)》という作品は、1913年のサロン・ドートンヌ(秋の展覧会)に出品されました。この作品と対になっている作品と共に出品され、画家としても力のこもった作品です。

ちなみに、片方の作品はフィリップス・コレクションと同じ街ワシントンのナショナル・ギャラリーに収蔵されています(当館でも過去に展覧会を実施した美術館です)。この作品の中には地球儀が描かれていますが、「分解が進んでいない」ので、地球儀であることがぱっと見て解りますね!

――ところで、ダンカン・フィリップスさんはキュビスムが好きだったのですか?

いいえ。ピカソとブラックがともにピークを迎えていた時期の作品は、あまり集めていません。ピカソやブラックは先鋭的過ぎて、つまりあまりにも「分解が進んで」いたためにコレクションの中で、調和がとれていない、バランスが取れないと考えていました。フィリップスの表現を借りれば、「抽象化が進みすぎている」ということになるのですけれども。
そんな中、フレネの作品は「分解が進み過ぎていない」という点でバランスがとれている評価されたのだと思います。

――そのほかにフレネの特徴はありますか?

彼の出身地は、ルマン24時間耐久レースが行われることで有名なルマンの生まれで、比較的早く10代の終わりでパリに出て、アカデミーランソンや、アカデミージュリアンにも通っていました。当館ファンならば、このワードにピンとくる人もいるのではないでしょうか?

ところで、以前当館で展覧会を開催した画家、梅原龍三郎がアカデミージュリアンに通っていた時期とフレネが通っていた時期が重なっているのです。もしかすると、二人は会ったことがあるかもしれません!気になって調べているのですが、残念ながらまだそれを裏付ける資料は見つかっていません。今後見つかったら、面白いですよね。
梅原先生がルノワールやセザンヌ、ピカソに学んだ時代と重なっているということにも、ぜひ想いを馳せてみてください。

――フレネの作品が見たくなったらどうすればいいですか?

それはもちろん、当館で10月19日から始まる「フィリップス・コレクション展」にご来館ください(笑)

そのほかには、大規模な回顧展のようなものは難しいと思いますが……、「キュビスム展」のようなテーマの場合は、ピカソやブラックといった大スターの作品と共に、展示されていることも多いと思います。

見落とさないように、「分解が進み過ぎていない」「鮮やかな色彩」というキーワードに注目してよく探してみてください!

――どうも有難うございました。次回は、ドイツ出身の「埋もれた巨匠」をご紹介します。

どうぞ、お楽しみに!!

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