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<歴史資料室で個展開催中!「アートアワードトーキョー丸の内2016」で三菱地所賞を受賞した吉田桃子さんインタビュー②>

皆さま、こんにちは。
前回に引き続き、三菱一号館 歴史資料室で開催中の、「アートアワードトーキョー丸の内2016」三菱地所賞受賞者、吉田桃子さんの個展「scene UKH ver.3」について、吉田さんご本人に作品や展示について、お話をお伺いしましたのでご紹介します。
(聞き手:三菱一号館美術館 学芸グループ長 野口玲一)

―映像を作るときにマケット(模型)を作って撮影されているという事ですが、音楽とはどのような関係があるのでしょうか。

映像を作る上で、音楽はストーリーにはほとんど関係していません。自分で描いた漫画が元になっています。ストーリーや世界観が前提にあって、それに合う音楽を探してくるという感じです。自分の気持ちが盛り上がるかどうかで決めてしまいます。
マケットを作る際、光や人物が動いているというイメージはあるのですが、風景をイメージ通りに描くのが難しくて、自分でも困っていました。解決策として、ネットで検索してイメージに合う画像を沢山印刷し、それらを組み合わせてマケットを作っています。実際には作りこみがかなり粗い部分もあるのですが、カメラで撮影していくと、ある時リアリティが出る瞬間があって、そんなふうにやっています。

―なるほど、素材として必要な部分は作りこみ、不要な部分は省略してしまうという事もあるのですね。

―音楽は具体的な楽曲があるわけではないのですか?

いえ、音楽は全て具体的な曲があります。普通にある曲です。
作品に番号をふっているのですが、タイトルが同一のものは同じひとつの曲からくるワンシーンということになります。個展を開催するときは、同じ曲のワンシーンの集積で一つの展示空間を作っています。シリーズで作品を作り、曲を変えていきますが、2年間くらいは同じ曲から作品を作っています。

―ちなみに今回はどのような曲を使っているのですか?差し支えなければ、曲名を教えて頂けませんか。

曲は言えませんが、ジャンルは、「エモ」と呼ばれるロックです。外国人が歌っている英語の曲ですが、情緒的というか感情が高ぶるというのか、切ない感じの音楽です。

―今回の作品についてお伺いします。登場人物の主人公がアーティストで、彼が作った作品が展示されている、という事をおっしゃってましたね。

この主人公も日頃私が描いている漫画のキャラクターなのですが、その漫画の登場人物には、全て私を投影しています。作品の元になる漫画は人には見せません。なぜその漫画を描いているかというと、自分自身の嫌な部分や、理想を受け入れるためなのです。
自己を投影した登場人物は、見た目は自分の好みで作っています。そこに自分の内面の醜いと思う部分や性格などをあてはめると、自分から引き離すというか、客観視することが出来る気がします。見た目だけは好みなので救われることがあるんです。
それから、自分の理想とする姿、自分は絶対になれないけれど、憧れているものをキャラクターにしてストーリーにすることでも、救われる気分になります。
よく出てくる金髪の男の人は、私の理想形なのです。若いアーティストで、海外で個展をしているという設定です。それは今の自分の姿から隔たっているのですが、その理想をギャグ調の漫画にすることで、現在の自分の状態を受け入れることができるのです。最近そのことに気付きました。

―なるほど。お話を伺っていると映像だけでなく、漫画も制作にあたって重要な意味があるのですね。

漫画のキャラや音楽に込めている感情、その時の気持ちというのは一過性のもので、二年位たったらきっと感じ方や好きなものが変化してしまうと思います。そうなる前に保存しておきたいんです。
それが一番の原点です。

次回は、作品の印象についてのお話をご紹介します。
◆歴史資料室での吉田桃子さんの個展「scene UKH ver.3」概要はこちら

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