ジュリア・マーガレット・キャメロンの生きた時代
英国ヴィクトリア朝の女性写真家、ジュリア・マーガレット・キャメロンの展覧会
「From Life―写真に生命を吹き込んだ女性ジュリア・マーガレット・キャメロン展」が7月2日に開幕致しました!
しっとりとしたセピア色の、夢見るような柔らかな質感の写真を待ちかねていた方も多いことと思います。
今回の展覧会で展示される、ヴィンテージプリントなど、貴重なプリントが多いキャメロンによる写真作品は、
ロンドンのサウス・ケンジントンにあるヴィクトリア・アンド・アルバート博物館からやってきます。
ところで、この博物館名でもあるヴィクトリアとアルバートとは誰のことなのでしょう。
ヴィクトリアとは19世紀の英国の女王。1819年に誕生、1837年に即位しました。歴史上の時代区分である
「ヴィクトリア朝」は彼女の名前からついたものです。アルバートとはヴィクトリア女王の夫君の名前。
キャメロンはヴィクトリア女王の時代、すなわちヴィクトリア朝に活躍した写真家なのです。
そして、ヴィクトリア女王は現在の女王、エリザベス2世の高祖母、つまり、ひいひいお祖母様にあたります。
Alexander Bassano, Portrait of Queen Victoria of England, Empress Victoria of India, 1882
ヴィクトリア女王の玄孫、つまりひいひい孫娘のエリザベス女王陛下は今年90歳です!4月のお生まれですが、
先の6月11日に大々的にお祝いの行事が行われました。例年、気候のよい6月に公式の祝典が挙行されるのです。
バッキンガム宮殿のバルコニー上の女王一家の映像をご覧になった方も多いことと思います。
薄いピンクのドレスを身につけた曽孫のお姫様、シャーロット王女が愛らしかったですね。
さて、エリザベス女王が、幼い王女時代に、未来の夫君、フィリップ殿下と出会って一目惚れし、
何年もの文通の末に結ばれたことはよく知られています。キャメロンの時代の君主、ヴィクトリア女王も
アルバート公と大恋愛で結婚しました。ヴィクトリアはハンサムなアルバートと会って一目惚れ、
彼らはなんと出会って一年経たないうちに結婚式を挙げています。
John Partridge, Portrait of Prince Albert, 1840, The Royal Collection
ところで、現在、ウェディングドレスはほとんど白色がおきまりです。
しかし19世紀より前、ウェディングドレスはピンクやブルーやベージュなど、時代によって様々な色をしていました。
真っ白のウェディングドレス、それは、ヴィクトリア女王がアルバート公との結婚式で身に付けたことがきっかけで
大流行したもの。デヴォン州ホニトンのボビン編みのレースをふんだんに使い、ロンドンで織られた輝くサテン地の
ドレスは世界中の女性の憧れとなりました。二人の結婚式は、ウェディングドレスの歴史を塗り替えた、
画期的なものだったのです。
Franz Xaver Winterhalter, Queen Victoria, 1847, The Royal Collection
ヴィクトリア女王はアルバート公とたいそう仲が良く、9人の4人の王子、5人の王女に恵まれました。
教養高かったアルバート公は女王を支え、二人は1851年のロンドン万博を開催するなど、
協力しあってイギリスの発展に尽くします。
彼らの名前を冠した、今回来日するキャメロン作品を所蔵するヴィクトリア・アンド・アルバート博物館は、
このロンドン万博で展示された品々を展示、保管するために建設された施設です。
博物館にはかつて美術学校もあり、我らが三菱一号館を設計したお雇い外国人の建築家、
ジョサイア・コンドルもここで学んでいます。
学生時代のコンドルもキャメロンの写真を目にしたことがあったかもしれません。
文化政策に尽くしたアルバート公が1861年に42歳の若さで腸チフスのために死去した後、
悲嘆にくれたヴィクトリア女王は、10年にもわたって宮殿に引き篭もり喪に服しました。
夫を愛する彼女は、アルバートを偲んで生涯喪服を付け続けたといわれています。
キャメロンが写真制作に熱中したのは、深い愛で結ばれたヴィクトリア女王とアルバート公夫妻が、
英国を世界一の大国に成長させた頃だったのです。
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