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「アール・デコとモード」展 担当学芸員 コラムータマラ・ド・レンピッカ

アール・デコの画家タマラ・ド・レンピッカが描いたスキーウェア

  

タマラ・ド・レンピッカ
《サンモリッツ》
1929年 オルレアン美術館

© Tamara de Lempicka Estate, LLC / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2025  G4087

女性がスキーを楽しむようになったのは20世紀初頭の頃です。上流階級が社交する高級リゾート地としてスイスやフランスにスキー場が整備されました。当時、現在のような高機能なスキーウェアはもちろん存在せず、女性はウールなどの厚手のコートやスカートを身に着け、その下に厚手のストッキングをはいたりしていました。時代が下ると徐々にパンツスタイルが増え、太ももの部分が膨らみ、すねの部分がすぼまったズボン、ニッカーボッカーズでスキーを楽しむようになります。

1928年の2月から3月にかけて、スイスのリゾート地であるサンモリッツで冬季オリンピックが開催されました。この年のオリンピックでは、アイススケート、スケルトン、ボブスレーのほか、スキー競技としてはクロスカントリー、ジャンプ、ノルディック複合が開催されています。ただ、スキー競技は男子のみでした。女性が参加するようになったのは1936年にドイツで開催されたガルミッシュ=パルテンキルヘン大会です。

本展で展示されているタマラ・ド・レンピッカによる《サンモリッツ》(1929年)は、サンモリッツでオリンピックが開かれた翌年に描かれたものです。レンピッカは1898年生まれのポーランドの画家で、独特のなめらかな質感の肖像画を多く描いたことで知られます。この作品では、まるで書き割りのような雪山を背景に、大きなウェーブがかかった黒髪、大きな緑がかった灰色の目が印象的な若い女性が、ウールのタートルネックの鮮やかな赤色のセーターを身に着け、かなたを見やっています。当時のスキーウェアは黒や茶色のような落ち着いた色彩が多かったのですが、社交場としてのスキーリゾートでは華やかな色のウェアも見られました。レンピッカの《サンモリッツ》は、高級リゾート地でスキーを楽しむ、ファッショナブルな女性の姿が描かれているのです。

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