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歴史資料室にて開催中「樹について」 作家インタビュー!②

皆さま、こんにちは。
本日は前回に引き続き、現在三菱一号館・歴史資料室にて開催されている、個展「樹について」(~5月22日)
の作品の制作者である、田中彰さんのインタビューの続きをご紹介いたします。
(聞き手:当館学芸グループ長・野口玲一)

2、《登場者たち》
この小さな作品は、丸太を彫り始めた頃から、少しずつ作りためていたものです。
記録したいモチーフをスケッチのような意味合いで残してきました。
作品1枚に1日かからないので、徐々に作品が増えてきました。

作品に描かれているモチーフは、丸太を彫っているときに現れた虫だったり、絵画教室に通っていた子どもが僕にくれた
記念品だったり、友達がくれたフクロウのぬいぐるみだったり、個人的な関わりのものばかりです。
実際には存在しない頭の中に降ってきたイメージも交じっています。

田中さん 登場者たち正面撮影:木奥惠三 
Photo: Keizo Kioku

―同じ1枚のフォーマットに収められているので、図鑑のようにも見えますね。
作品ごとに固有のエピソードがあって興味深いです。

3、《中生代白亜紀層》
僕が現在住んでいる、ひたちなかの那珂湊の海は、潮が引くと、
恐竜が生きていた8000万年前の白亜紀の地層が現れてきます。
潮が満ちるとその地層が隠れて現在の風景に戻ります。
同じ場所であるのに、景色だけでなく、時代まで変わっていくように感じられるのがとても面白いのです。
田中さん 中世白亜紀層撮影:木奥惠三 
Photo: Keizo Kioku

4、《樹の中の風景》~中生代白亜紀層から~“mental sketch modified”
《登場者たち》の作品がまとまった数になった頃のことです。壁にかけたむき出しの版画が風にそよぐのを観たとき、
ふと作品が生きているような気がして、絵に登場させてはどうかと思いました。版画の作品としてはモノクロですが、
自分の中に色の記憶があったので、この作品では色で表現しました。
田中さん 気の中の風景撮影:木奥惠三 
Photo: Keizo Kioku

背景の海は、《中生代白亜紀層》で描いた那珂湊です。普段、僕は大きな流木に座って海を眺めているのですが、
その座っている視線の先に、登場しそうなモチーフを考え、絵の中に定着させるというやり方で描いていきました。
来館した方も、向かいのベンチに座ってもらって、「見る」ってどういうことなんだろう、
ということを感じてもらいたいです。その人の目に「見えている」風景と、
「見たい」と考えている風景は違うこともありますよね。
そこで、見るってどんなことか、改めて考えるきっかけになればと思っています。
田中さん 丸太全体撮影:木奥惠三 
Photo: Keizo Kioku

次回に続く

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