原田マハさん「異端の奇才――ビアズリー」展
原田マハさんが「異端の奇才――ビアズリー」の感想を寄せてくださいました!原田さん視点での展覧会のおススメポイントもご紹介くださいましたので、参考になさってください。
待ちに待ったビアズリー展が三菱一号館美術館で開催される。
ビアズリーは日本で多くのファンを持つから、わくわくしながら出かけたのは私ばかりではないだろう。

画家として活躍したのはわずか4年ほど。その間、オスカー・ワイルドの「サロメ」に挿絵を提供し、25歳で病死したーーというドラマティックな人生にも惹かれる。世紀末ロンドンにあだ花のごとく咲いた夭折の天才画家を、私は自作のモチーフとして取り上げないわけにはいかなかった。
今回の展覧会では、ビアズリーの短い画業の足跡を展観できるが、中でも注目なのは「サロメ」挿絵全点の展示である。旧約聖書に登場する姫君・サロメを誇大解釈して狂気のヴェールを纏う美姫に仕立て上げたワイルドの創作を、ビアズリーはさらに一歩進めて官能的かつ斬新に変容させた。1ページ大の紙の上に緻密に構築されたあやかしの小宇宙に、当時の人々はどれほど驚き、また魅了されたことか。時空を超えて、その版画全点が今東京にある。
息を潜めて見入る人々の中に紛れて、私も一瞬、呼吸を止めて「サロメ」を見つめた。
![オーブリー・ビアズリー《クライマックス》1893年(原画)、1907年(印刷)、ライン・ブロック/ジャパニーズ・ヴェラム[厚地和紙]、34.2 x 27.2 cm(紙寸) ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館<br />
Photo: Victoria and Albert Museum, London](https://mimt.jp/wp-content/uploads/2025/03/2006AT6672.jpg)
Photo: Victoria and Albert Museum, London
短すぎた人生、短すぎた画歴。
しかしビアズリーは命を燃やし、こうして永遠を手に入れたのだ。
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