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三菱一号館美術館公式Twitterのご紹介「画鬼・暁斎」展100問ツイートアーカイブ(問76~問100/展覧会について③)

皆様こんにちは。
100問ツイートの続きです。暁斎 HPトップ
【問76】河鍋楠美さんは、河鍋暁斎記念美術館の館長でいらっしゃいますね。
【答76】はい。
    暁斎のひ孫にあたる方です。1977年(昭和52年)、ご自宅を改装して河鍋暁斎記念館を開館されました。
    現在では(公財)河鍋暁斎記念美術館になっています。暁斎の画業を広く伝えるべく、
    日々活動されております。詳しくは、河鍋暁斎記念美術館HPをご覧ください。

【問77】河鍋暁斎記念美術館はどこにありますが。
【答77】埼玉県蕨市にあります。私たちには河鍋暁斎記念美術館館長としての印象が強い河鍋さんですが、
    実は現役の眼科医として診療にも携わっていらっしゃいます。

【問78】美術館の館長と眼科医を両立されているのですか!
【答78】はい。以前は病院の一角にギャラリーを併設し、現代の作家を紹介していたそうです。
    河鍋暁斎記念美術館でも暁斎とかかわりがあったり、絵の表現が重なるような作家紹介を
    行う活動もされています。
    暁斎が近年再評価されるようになったのは、河鍋楠美さんの40年にわたる長年の情熱のたまものです。

【問79】「画鬼・暁斎は」コンドルと暁斎が三菱一号館で邂逅する展覧会ですが、
    この度の二人の関係性に焦点をあてた展覧会として、捉えておくべきポイントはありますか。
【答79】コンドルの描いた《鯉之図》と暁斎が描いた、《鯉魚遊泳図》は比べてご覧ください。
    師匠の暁斎が描いた《鯉魚遊泳図》の画面向かって左上、
    身を翻す二匹の鯉をコンドルが抜き出して描いています。

【問80】二つの絵のからどのようなことが解りますか。
【答80】コンドルが記した『Paintings & Studies by Kawanabé Kyôsai』にはぼかしの積み重ねや、鱗の描法など、
    暁斎の《鯉魚遊泳図》がいかにシステマチックで合理的な描法に基づいているかが記載されておりますが、
    その技法がコンドルにも確実に伝わっていたことが解ります。

【問81】コンドルは、日本画の描き手としてはどのような評価だったのでしょうか。
【答81】日本の展覧会で受賞したこともあります。暁斎の技量と比べると見劣りするところもありますが、
    この《鯉之図》はコンドルの作品の中で特に完成度の高い作品です。

【問82】鯉が正面を向いている構図は、暁斎の《鯉魚遊泳図》のみですね。
【答82】正面向きの構図は伊藤若冲の影響ではないかと言われています。動物の顔を正面から描くのは、
    江戸の後半に例がありますが珍しいものです。

【問83】その他に技法で特徴的なものはありますか。
【答83】グラデーションを生かした鯉の描写は円山四条派からの影響が指摘されております。
    暁斎が狩野派だけでなく、京都の画派からも広く学んでいたことを示しています。

【問84】『Paintings & Studies by Kawanabé Kyôsai』とはどのような本ですか。
【答84】暁斎の伝記、詳細な印刷の記録、コンドルの暁斎画コレクションの記録などからなっています。

【問85】日本画は、師匠の技は「見て盗め」という感じで手取り足取り教えるという印象はないのですが、
    実際は違っていたのでしょうか。
【答85】暁斎に関しては例外的だといえます。外国人であったコンドルとの関係もあるかと思いますが、
    自分の技術を大変熱心に伝えていたようです。コンドルがその内容を詳細に記録しているので、
    資料としても大変役に立ちます。

【問86】暁斎の技法が解るのはコンドルのおかげという事でしょうか。
【答86】はい、そのようにも言えると思います。コンドルは大変なメモ魔だったらしく、
    とても詳細に記録しています。技法についてもコンドルの視点で考察を加えていたり、大変興味深いです。

【問87】他にコンドルが今に伝えたことはありますか。
【答87】『Paintings & Studies by Kawanabé Kyôsai』の口絵に暁斎筆の《大和美人図屏風》
    が色摺木版画で印刷されています。これは《大和美人図屏風》を写真で撮影し、
    それをコロタイプで版下に転写し123版摺りで制作した、当時最高の技術で造られたものです。

【問88】《大和美人図屏風》の複製画ということでしょうか。
【答88】そうです。当時は現在のようなオフセット印刷はありませんので、この複製は木版で作られていました。
    当時の技術においては最高のものです。

【問89】なるほど、ちなみに、「コロタイプ」とはどんなものですか。
【答89】写真のネガを、感光剤をを含むゼラチンを塗ってガラス板に転写し、版とする方法です。

【問90】《大和美人図屏風》は今回の「画鬼・暁斎」展のチラシやポスターにも使われていましたね。
    豪華な印象の絵ですが、コンドルにとっても大事な作品だったのですか。
【答90】もちろんです。《大和美人図屏風》は暁斎に弟子入りしたコンドルの絵の上達を喜んだ暁斎が、
    コンドルの目の前で1年ほどかけて制作し、プレゼントした作品ですから。

【問91】《大和美人図屏風》はとても贅沢なものですね。
    目の前で師匠である暁斎の技術のすべてを見ることが出来たのですね。
【答91】その通りです。
    描かれた遊女は暁斎が頻繁に取り上げる、浮世絵美人のルーツである江戸時代前期のスタイルです。
    一方、背後の稲作を描いていた耕作図は狩野派で定番の画題でした。江戸の諸派の技法を併せ持つ、
    きらびやかな作品です。

【問92】弟子コンドルを想う暁斎の様子が想像できますね。
【答92】暁斎は、伝統絵画のエッセンスをこの作品に込めたのですね。右の遊女の衣装にも注目してみてください。

【問93】《大和美人図屏風》には何が描かれているのでしょうか。
【答93】彼女の着物には、太鼓、笙、琵琶といった雅楽に使われる楽器が描かれています。 
    足元のところにあるのが楽器なのか何かわからないのです。下絵には「たて」とあるのですが・・・
    今後の課題です。人物の背景にもご注目下さい。

【問94】背景に描かれているのは、田植えの様子でしょうか。
【答94】これは、【四季耕作図】といって、狩野派で伝統的に描かれた画題です。もともとは中国において、
    為政者に農民のくらしや農作業の苦労を教えるために描かれたのが始まりと言われています。
    中国から日本に伝わりました。1枚の屏風の中にすべての季節が描かれているので、
    田植えから収穫まで、作業の過程が解ります。

【問95】《大和美人図屏風》の下絵はコンドルが暁斎から譲り受けて、資料として残っているそうですが
    「画鬼・暁斎」展では展示されていますか。今回の展覧会では展示されていますか?
【答95】はい、着物の衿の部分をスケッチしたものや、楽器のスケッチが展示されています。
    スケッチまで資料として渡していたことから、コンドルへの信頼が伺えます。
    また当時の日本画の資料としても大変貴重です。

【問96】「画鬼・暁斎」展では、メトロポリタン美術館所蔵作品も公開されていますが、
    どのように米国に渡ったのでしょうか。
【答96】暁斎とコンドルの共通の友人であった、フランシス・ブリンクリーの仲介です。
    彼の仲介で、暁斎の作品は米国の実業家チャールズ・S・スミスの手に渡り、
    現在ではメトロポリタン美術館に所蔵されています。

【問97】メトロポリタン美術館所蔵作品の見どころを教えてください。
【答97】暁斎の最晩年の作品ですが、卓越した筆さばきと大胆な構図にご注目ください。    
    作品の元となった河鍋暁斎記念美術館所蔵の《英国人画帖下絵》と一緒に展示しています。
    動物たちの生き生きとした表情にも注目です。

【問98】《英国人画帖下絵》について教えてください。
【答98】《英国人画帖下絵》は河鍋家に伝えられたもので、ここからそれぞれコンドルとブリンクリーのために
    画帖が制作されました。今回はブリンクリーの水墨の画帖が出品されているのですが、
    コンドルの極彩色の画帖の方は現在行方不明なのです。

【問99】暁斎作品は海外に多いのですか。
【答99】暁斎は国内よりも海外で人気があり、値段も高いので、
    残念なことに重要な作品の多くが海外に流出しているという状況です。
    コンドル旧蔵の《大和美人図屏風》、《恵比寿と大黒図》や《松に鷹、昇る朝日図》などは
    海外から日本へ買い戻された貴重な作例です。

【問100】暁斎作品を観て、バラエティの広さに驚きました。
【答100】《暁斎画談》をみると、彼が学んだのは同時代の狩野派や浮世絵ばかりでなく、それらを遡って吸収し、
     さらに中国の水墨画、大和絵、文人画、京都の諸派と、そのあまりの幅広さに驚かされます。
     暁斎の作風には、江戸と伝統絵画のエキスが凝縮されて詰め込まれているのです。

さて、「画鬼・暁斎」展では展覧会をより深くご理解いただくためツイッター上このような企画を行っておりました。
今後も当館のさまざまな情報に加え、ツイッター上の企画が行われるかもしれませんので、フォローしてみてください。

次回はおまけとして、河鍋楠美さんと担当学芸員の野口からの「画鬼・暁斎」展を実施した感想をご紹介いたします。
お楽しみに!

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