「ヴァロットンー黒と白」の舞台裏
現在開催中の展覧会「ヴァロットン―黒と白」は、三菱一号館美術館が所蔵するフェリックス・ヴァロットンの版画コレクションを初めて一挙公開するものです。今日はこの展覧会が開幕するまでの展示作業の舞台裏を少し紹介させていただきます。
展覧会の前後には、作品そのものと額などの作品周りについて、綿密な点検作業をおこないます。写真は、修復の専門家に作品の状態を見ていただいているところです。作品の状態は「調書(ちょうしょ)」に記録しておきます。状態に変化がある箇所は写真を撮り、あとから確認できるようにします。世界的に見ると、近年は紙の調書ではなく、デジタル化された調書を使うことも多くなっています。
状態点検を経て、作品はようやく展示されます。作品の展示には、レーザーの水平器を使用します。工事現場でよく見るあれですね。美術館では、近年はこれを使って作品の水平を出して展示しています。美術品輸送展示のプロ曰く、水平器の5台使いは完璧な「直角・水平」への拘りの証とか。新しい額だとこれ一発なのですが、何百年も前の作品などは額自体が歪んでいて、斜めに見える時もしばしば。そういう時は人間の目で見た感覚で位置を決定しています。
また、展覧会の裏方の重要な作業のひとつに、「会場施工」と呼ばれる仕事があります。今回のヴァロットン展でも、施工会社の皆さんのお世話になっています。会場施工の仕事は、展覧会冒頭の挨拶や解説のパネル、また作品情報を載せたキャプションの製作、作品が掛る壁の製作、本などの史料類が安全に展示されるための支持具の製作など、多岐に渡ります。
この写真では、180センチの脚立に上って作業をしているところです。何を準備しているところでしょう・・?会場でご確認ください!
最後に、作品を輝かせるのが照明の作業です。当館では専門の照明の専門家に依頼して、LEDの様々な種類のライトで作品を照らしています。
「高所作業車」に乗って、作品一つ一つに光を当てていきます。ヴァロットン展は版画が主ですが、版画は褪色が起こりやすいので、50ルクス以下という低い照度に統一します。「照度計」を使って照度が適正かを確認していくのも、照明の重要な作業のひとつです。
このように、多くの人の協力と様々な準備過程を経て開幕に漕ぎ着けた「ヴァロットン―黒と白」展。舞台裏を知って展覧会をご覧になると、また違う発見があるかもしれません。是非皆さんも足を運んでみてください。
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