「バルテュス 最後の写真―密室の対話」展 、担当学芸員が語る魅力
本展覧会も閉幕まで残り1か月を切りました。
改めて担当学芸員が展覧会の魅力をご紹介いたします。
2014年9月7日(日)まで当館歴史資料室にて休まず公開しておりますので、どうぞお見逃しなく!
<担当学芸員 野口玲一>
―どんな展覧会ですか?
日本初公開のバルテュスの写真展であり、出品されたポラロイドを通してバルテュスがどのように絵画制作を行っていたかを知ることができます。
バルテュスは油彩を描き始める前に、丹念にデッサンを重ねる画家なのですが、晩年は体の衰えにより、鉛筆を持つことができなくなりました。そこでポラロイドカメラを鉛筆代わりの道具とし、膨大な量の写真を撮りながら作品のイメージを固めていったのです。
―見どころはなんですか?
これらのポラロイド写真は、制作の準備作業というべきもので、バルテュス本人は公開するつもりがなく、また作品であるとも見なしていなかったと思います。一方でそれを遺された私たちにとっては、バルテュスの制作工程、言い換えれば彼の手の内を覗きみることができる貴重な資料なので、展示室は一見同じような写真が並んでいる印象かもしれません。しかしそれらはバルテュスがイメージをまとめるために、脚や腕の位置をほんの数センチずつ動かしながら、光の配分や構図を微妙に変え、似た構図の写真をフラッシュ有り無しの両方で取り…と、試行錯誤を繰返しながら膨大な時間をかけ撮影した何パターンもの写真なのです。
―どんな楽しみ方ができますか?
バルテュスはモデルのアンナ氏を、8年間にわたり毎週同じ部屋で撮影し続けました。写真には「瞬間」しか写りません。しかしその写された一瞬が積み重ねられたさまは、連続する動画のシークエンスを連想させます。
バルテュスが描くためにモデルと費やした膨大な時間と、絵画に対する執拗なまでのこだわりや情熱を感じとって頂けるのではないかと思います。
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