スペシャル館長対談ダイジェスト 黒柳徹子さん×高橋明也

2016年のオートクチュール展に際し、館長対談にご出演いただいた黒柳徹子さんは、開館記念展の「マネ展」からほとんど欠かさず当館の展覧会に足を運んでくださっています。その黒柳さんを再びお招きしたスペシャル館長対談をダイジェストでお伝えします。

高橋 開館から10年、黒柳さんは当館で開催したほとんどすべての展覧会をご覧くださって、ほんとうにありがとうございました。

黒柳 この10年で、ずいぶんと色々な展覧会を楽しませていただきました。高橋さんと一緒に拝見すると、教科書どおりの解説ではなく、意外なエピソードもご披露いただけるから、いつもとびきり極上の時間を過ごせます。

高橋 いつもご案内していて思うのは、黒柳さんは本当に丁寧に1点1点の作品をご覧になられることです。隅から隅までとても高い集中力で鑑賞されるので、本当に絵がお好きなんだなと思います。

黒柳 そうね、どの作品が有名な画家のもので、どれがよく知られた作品などは、あまり気にしないで見ているかもしれません。実物、本物と向き合える時間はとても貴重だから、ついつい一生懸命見てしまうのね。

スペシャル館長対談ダイジェスト 黒柳徹子さん×高橋明也

今は分からなくてもいい――。 子どもが本物に出会う体験を提供することが大切

黒柳 子どもたちは、分かるとか分からないとかは置いておいて、まずは見る体験を積むことが必要だと思います。たとえば自分の習い事と同じ光景を絵のなかに発見したり、絵に描かれている世界が自分の体験とつながれば、必ず記憶に刻まれます。だから小さい子どもに絵を見せるのは決して無駄なことではないと思うんですよね。分からなくてもいいの。いいもの、本物を見せるという経験が大切。

高橋 絵の大きさ、絵の具やカンヴァス、紙の質感など、実物を見ないかぎり伝わらない情報もたくさんありますからね。へたしたら大人よりも子どものほうがダイレクトに本質を感じ取ることだってあると思います。

黒柳 あと、私、昔からずっと思っていることがあるんです。美術館の絵を、子どもが自分の目の高さで見られたら、どんなにいいかしらって。子どもって、穴をのぞいたりするのが好きでしょ。そこに親が気づかない作品があったりしたら、子どもたちはとても喜ぶと思うんです。

高橋 それは面白いですね。親にどんな作品があったか、伝えたい気持ちも起こるでしょう。

黒柳 それから、子どもと同様、車椅子の方が美術館で絵を鑑賞するのは、視線の高さが合わなくて大変だと思うんです。絵を低く掛けるのは難しいでしょうから、私、美術館には、絵を見るための少し高めの車椅子があったらいいなと思うんです。

高橋 たしかに! せっかく、車椅子で外出してくれたんですからね。それは今後、ますます必要になってくる考え方ですよ。

黒柳 そうでしょ。そういう車椅子、ぜひ実現してほしいわ。

スペシャル館長対談ダイジェスト 黒柳徹子さん×高橋明也

【プロフィール】
黒柳徹子
Tetsuko Kuroyanagi

女優・ユニセフ親善大使
東京乃木坂に生まれる。トモエ学園から香蘭女学校を経て、東京音楽大学声楽科を卒業。
NHK放送劇団に入団以来、NHK専属のテレビ女優第一号として活躍。現在、「社会福祉法人トット基金」理事長、「ちひろ美術館」館長(東京・安曇野)、「日本ペンクラブ」会員、「世界自然保護基金ジャパン」顧問としても活躍。