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トップ > スペシャルインタビュー高橋明也×篠原ともえ

高橋明也三菱一号館美術館館長タレント/アーティスト篠原ともえSPECIAL  INTERVIEW

photo : MAYUMI HOSOKURA,
coiffure et maquillage : YOKO SUEMITSU
text : NAOKO AONO, collaboration : mikuni MARUNOUCHI

篠原ともえ(タレント/アーティスト)

篠原ともえ(タレント/アーティスト)

1979年、東京都生まれ。歌手、女優として活動するほか、大学で本格的にデザインを学び、自身のステージ衣装や松任谷由実コンサートツアーの衣装デザインを手がける。3/8にベスト盤『☆ALL TIME BEST☆』をリリース。


"フラットで可愛い、画面の奥に何かがある絵です"

篠原 正直なところ「ナビ派」ってあまり詳しく知らなかったんですが、可愛らしい絵ですね。でも、どことなく影もある。まずナビ派ってどんな「派」なのか、教えてください。

高橋 ナビ派は印象派の約20年後のムーブメントです。ルネサンス期に「芸術は自然を師とすべき」「芸術は神の創造に匹敵する偉大なもの」という概念ができたのに対して、印象派は「概念を入れ込まずに、自分の目で見たように描く」「等身大の芸術」を目指しました。ナビ派は印象派の考え方をさらに自由に推し進めたのです。たとえばナビ派の画家たちがリスペクトしていたゴーガンは、「地面の色を紫にしたかったら、そうすればいい」と言っています。

日常の中の違和感を描く。

篠原 実際にそういう色や形をしているかということではなく、心の中のリアリズムということなんですね。子どもの目で見る景色のようです。 『庭の女性たち』では身体の膨らみで服の格子柄や水玉模様が歪むはずなのに、真っ直ぐ描かれているのも面白いですね。

高橋 この絵のようにフラットな色面を多用した、可愛い装飾的なディテールもナビ派の特徴です。

©RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

『庭の女性たち』
ピエール・ボナール

身体の膨らみを無視した服の柄の平坦な表現、植物をモチーフにした装飾的な背景、縦長の構図、遠近の極端な強調など、鳥居清長の浮世絵をはじめとする日本美術の影響がうかがえる作品。四季を並べるのも日本ではおなじみだが、西洋美術ではあまり見ない配置だ。あえて紙に描き、油絵の具のツヤを消しているのもおもしろい。「マットな表現は着物に通じると思います」(高橋)。タイトルにも服の名前を使い、ファッションにフォーカスを当てていることがわかる。「構図も淡い色彩もとてもデザイン的で、肌触りが気になる絵です」(篠原)。
左から、『白い水玉模様の服を着た女性』160.3×48㎝、『猫と座る女性』160.2×47.8㎝、『ショルダー・ケープを着た女性』160.5×48㎝、『格子柄の服を着た女性』160.5×48㎝。以上1890~91年 デトランプ・カンヴァスに貼り付けた紙、装飾パネル 

篠原 ナビ派の「ナビ」は預言者の意味だそうですが、彼らはどのような未来を思い描いていたのでしょうか。

高橋 画家によって違いますが、ひとつは「かすかな違和感」です。日常生活で誰もが感じる〝どこか違う〟という感覚。たとえばヴァロットンの絵で、森の中の広場のような場所で子どもが遊んでいる絵があります。でもその広場に落ちる木の影が、子どもを追いかけているようにも見える。そんな言い知れぬ不安です。この頃はいまと同じように、どこかで絶えず戦争が起こっているけれど、人々はそれを考えないようにして表面上は平穏な日々を生きていました。ナビ派の絵にはそんなことが反映されているのかもしれません。

篠原 そう言われてみるとヴュイヤールの『ベッドにて』という絵も何となく不穏さを感じさせますね。

©RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

『ベッドにて』
エドゥアール・ヴュイヤール

眠っているようにも、病や死など不吉なものも感じさせる絵。「グレイッシュなベージュから白に近いものまで、限られた色数で豊かな表情を出しているのに惹かれます」(篠原)。
画面上部の色帯で十字架の上部が切られ、サインもその線に沿って書くデザイン感覚もおもしろい。1891年 油彩・カンヴァス 74×92㎝ 

高橋 リラックスして平穏な眠りに落ちているようにも見えるし、人物の頭上に十字架が描かれていることから不治の病か、亡くなっているとも考えられます。また、ピエール・ボナールは妻の絵ばかり描いているのですが、顔をはっきり表現せず、描いてもあまりきれいに描かない。一見、家庭的な幸福感に満ちた、フラットな画面の奥に何かが閉じ込められている──そんな二面性を感じさせるのも、ナビ派の特徴なのです。

篠原 ボナールは怪しい人!(笑)。見た目には優しくて可愛いのに、奥には違うものがある。外見の印象と、話した時の感じが違う女性みたいです。ナビ派の絵を見ていると、きれいだけれどどこか悲しい切ない感じがして、ふたつの要素の間で心が揺れるのを感じます。そんな二面性で、心理的な奥行きや立体感を出しているのはさすがだなと思いますね。

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