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本展の見どころ

19世紀末のパリで、前衛的な活動を行った若き芸術家のグループ「ナビ派」。ボナール、ヴュイヤール、ドニ、セリュジエ、ヴァロットンらを中心とするナビ派の画家たちは、ゴーガンから影響を受け、自らを「ナビ(預言者)」と呼んで、新たな芸術表現を模索しました。近代都市生活の諸相を平坦フラットな色の面で表す装飾性と、目に見えないものを描く内面性――日常と神秘をあわせ持つナビ派の芸術は、一見控えめで洗練された画面のうちに、20世紀美術を予兆する静かな革新性を秘めています。本展は、近年国際的に評価が高まるナビ派の芸術を、日本で初めて本格的に紹介する展覧会です。オルセー美術館が誇るナビ派のコレクションから、油彩約70点、素描約10点など合わせておよそ80点が一堂に会します。

「ナビ派」とは

19世紀末パリ、ゴーガンの美学から影響を受け、自らを新たな美の「ナビ(ヘブライ語で"預言者"の意味)」と称した前衛的な若き芸術家グループ。平面性・装飾性を重視した画面構成により、20世紀美術を予兆する革新的な芸術活動を行った。

3つの見どころ

  • 「ナビ派」コレクションを一堂に。オルセー美術館が誇るフランス近代美術の殿堂
  • 日本で初めて本格的に紹介国際的に評価が高まる「ナビ派」芸術を
  • 知られざる革新性─20世紀美術を予兆する 19世紀末の美の預言者「ナビ派」

第一章 ゴーガンの革命

ゴーガンの芸術は、ナビ派をはじめとする1880年代末の新たな芸術運動に対して大きな役割を果たしました。本章では、ナビ派が影響を受けたゴーガンやベルナールらの作例を紹介します。ポン=タヴェンでセリュジエがゴーガンの教えに従って描いた《タリスマン(護符)》は、風景が大胆に単純化され、まるで抽象絵画のようです。
この実験的な作品はパリに持ち帰られ、アカデミー・ジュリアンの学生であったボナール、ドニ、ランソンらがナビ派を結成する引き金となりました。

ポール・ゴーガン《「黄色いキリスト」のある自画像》
1890-1891年 油彩/カンヴァス 38×46cm
© RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) /René-Gabriel Ojéda / distributed by AMF

ポール・セリュジェ《タリスマン(護符)、愛の森を流れるアヴェン川》
1888年 油彩/板 27×21.5cm
© RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) /Hervé Lewandowski / distributed by AMF

第二章 庭の女性たち

ドニやボナールは、「庭の女性」という主題の作品を数多く手掛けました。色彩の斑点によってアラベスク装飾のように表された女性像は、四季や人生における段階を象徴しています。ボナールの連作《庭の女性たち》では、引き伸ばされた細長い人物像の衣装が、それらを取り囲む植物文様の装飾と見事に調和しています。もともと屏風として制作された本作は、ナビ派の新たな美学が、何よりも装飾的な芸術に立脚していることがよくわかる作例です。

①ピエール・ボナール《 庭の女性たち 白い水玉模様の服を着た女性》 1890-91年
 デトランプ/カンヴァスに貼付けた紙、装飾パネル 160.3×48cm

②ピエール・ボナール《 庭の女性たち 猫と座る女性》 1890-91年
  デトランプ/カンヴァスに貼付けた紙、装飾パネル 160.2×47.8cm

③ピエール・ボナール《 庭の女性たち ショルダー・ケープを着た女性》 1890-91年
  デトランプ/カンヴァスに貼付けた紙、装飾パネル 160.5×48cm 

④ピエール・ボナール《 庭の女性たち 格子柄の服を着た女性》 1890-91年
  デトランプ/カンヴァスに貼付けた紙、装飾パネル 160.5×48cm 

© RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / dsitributed by AMF

アリスティード・マイヨール《女性の横顔》
1896年頃 油彩/カンヴァス 73.5×103cm
© Musée d'Orsay, Dist. RMN-Grand Palais /Patrice Schmidt / distributed by AMF

第三章 親密さの詩情

ナビ派の絵画の魅力は、その作品に深く入り込んでいくような親密性です。「親密派(アンティミスト)」とも呼ばれたボナール、ヴュイヤールらは、身近な人々をモデルとし、慣れ親しんだ空間から着想を得て室内画を描きました。こうした日常生活の場面はドラマチックに脚色され、奇抜なトリミングや逆光による効果が、示唆に富んだ詩情を生み出しています。
また、ヴァロットンが描く室内情景は、静けさの中に秘密や苦悩、駆け引きや緊迫したドラマが満ちており、奇妙な感覚や不安を呼び起こします。

フェリックス・ヴァロットン《化粧台の前のミシア》
1898年 デトランプ/厚紙 35.9× 29cm
© RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) /Hervé Lewandowski / distributed by AMF

ピエール・ボナール《ベッドでまどろむ女(ものうげな女)》
1899年 油彩/カンヴァス 96.4×105.2cm
© Musée d'Orsay, Dist. RMN-Grand Palais /Patrice Schmidt / distributed by AMF

第四章 心のうちの言葉

肖像画や自画像は、ナビ派の芸術家同士の密接な交流や友情を物語っています。これらの肖像画は、モデルの内面が露わになるような視線や態度の描写によって見る者との間に直接的な関係を作り出し、夢や独白にふける人物たちに共感を覚えずにはいられません。2016年、オルセー美術館に新規収蔵されたヴュイヤール作《八角形の自画像》は、まさに画家の革新的な美学を象徴する作品です。黄色い髪、オレンジ色の髭、青い上着が織りなす鮮烈な色彩はフォーヴィスムを思わせるほどで、芸術の新たな時代を予告する前衛性に驚かされます。

ピエール・ボナール《格子柄のブラウス》
1892年 油彩/カンヴァス 61×33cm
© RMN-Grand Palais(musée d'Orsay) /Hervé Lewandowski / distributed by AMF

エドゥアール・ヴュイヤール《八角形の自画像》
1890年頃 油彩/厚紙 35.9×28.1cm
© Musée d'Orsay, Dist. RMN-Grand Palais /Patrice Schmidt / distributed by AMF

ヨージェフ・リップル=ローナイ《花を持つ女性》
1891年 パステル/ベージュ紙、木枠に張ったカンヴァス 46×38cm
© RMN-Grand Palais(musée d'Orsay) /Hervé Lewandowski /distributed by AMF

第五章 子ども時代

日常生活の注意深い観察者であったナビ派の画家たちは、子ども時代をテーマにした重要な作品を多く残しています。ドニは自身の子どもたちの誕生や家族の肖像を描き出し、ボナールは「小さな大人」のように振る舞う子どもの姿やその気高さをユーモラスに活写します。ヴュイヤールの連作《公園》は、前衛文芸雑誌『ラ・ルヴュ・ブランシュ』発行人のアレクサンドル・ナタンソン邸のために制作され、パノラマ的な視点で子どもたちの世界を表現した傑作です。ナビ派の画家たちは、無垢で可愛い子どもの姿だけでなく、幼少期特有の危うさや不安といった暗い側面も探求しました。帰られ、アカデミー・ジュリアンの学生であったボナール、ドニ、ランソンらがナビ派を結成する引き金となりました。

フェリックス・ヴァロットン《ボール》
1899年 油彩/板に貼り付けた厚紙 49.2×62cm
© RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) /Hervé Lewandowski / distributed by AMF

ピエール・ボナール《ランプの下の昼食》1898年
油彩/板 23.3×31.8cm
© RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) /Adrien Didierjean / distributed by AMF

エドゥアール・ヴュイヤール
(左から)
《公園 戯れる少女たち》1894年 油彩/カンヴァス 214.5×88cm
《公園 質問》1894年 油彩/カンヴァス 214.5×92cm
《公園 子守》1894年 デトランプ/カンヴァス 213.8×73cm
《公園 会話》1894年 デトランプ/カンヴァス 213.5×156cm
《公園 赤い日傘》1894年 デトランプ/カンヴァス 214×81cm
© RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

第六章 裏側の世界

精神性、秘教主義、宗教、そして夢や非現実――印象派絵画が失った「目に見えない世界」を描くことも、ナビ派の大きな関心事でした。ドニは、妻マルトをモデルにした《ミューズたち》などの制作にあたり、自身のカトリック信仰や古典的教養に基づいています。セリュジエやランソンらの象徴主義的絵画が想起させるのは、魔術や禍といった、より一層怪奇的な側面です。ナビ派の画家たちは、ランソンのアトリエに集って聖書や秘教的書物の読解を繰り返し、創作のインスピレーション源としたのです。

モーリス・ドニ《ミューズたち》
1893年 油彩/カンヴァス 171×137.5cm
© Musée d'Orsay, Dist. RMN-Grand Palais /Patrice Schmidt / distributed by AMF

エドゥアール・ヴュイヤール《ベッドにて》
1891年 油彩/カンヴァス 74×92cm
© RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) /Hervé Lewandowski / distributed by AMF

ポール・ランソン《水浴》
1906年頃 油彩/カンヴァス 85.5×120cm
© RMN-Grand Palais (musée d'Orsay) /Hervé Lewandowski / distributed by AMF

本展でご覧いただける、三菱一号館美術館のコレクション

本展の途中では、三菱一号館美術館および日本のコレクションから、本展に関連した作家たちの作品を数点展示しています。
ボナール、ヴァロットンなどナビ派の画家たちに加え、ナビ派が敬愛したルドンが描いたパステル画の最高傑作のひとつとも言える《グラン・ブーケ(大きな花束)》もご紹介します。展覧会と併せてお楽しみください。

オディロン・ルドン《 グラン・ブーケ(大きな花束)》
1901年、パステル/カンヴァス、248.3×162.9㎝、
三菱一号館美術館蔵

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